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にいちゃん

にいちゃん はらだ

BLマンガ作品DATA

著者
はらだ先生
出版社
Cannaコミックス
出版年
2017年4月
おすすめ
推奨媒体
紙の本・電子版
紹介PR
あらすじ
ふつうってなに
まともってなに
これはいけないこと…?

《BL界の鬼才・はらだが描く衝撃の禁断愛、ついに解禁――》

幼い頃、近所のにいちゃんに手を出され、現場を母親に見られてしまったゆい。
それを境に、いつも遊び相手になってくれていたにいちゃんは姿を消し、 親からは過保護なまでの監視を受けるようになってしまった。
あれから時が経ち、にいちゃんを忘れられないゆいは、 ある日もあてもなく街を徘徊し、そして、ついに再会の日がくる――。
しかし、久しぶりに会ったにいちゃんは、昔のような優しいにいちゃんではなくなっていて……。

「にいちゃん」試し読み・電子書籍

にいちゃん

にいちゃん はらだ

「にいちゃん」の感想

はらだ先生といえば、ギャグエロ、下衆、クズ、ショタ、執着系が主に得意という認識でしたが、そういうカテゴライズもどうでもよくなるような、完成度のマンガです。シリアスです。攻めとか受けとかで楽しめる種類のマンガではないですが、もういろいろ考えさせられる、素晴らしい作品です。エロはありますが、BL読まない人にも読んでほしいです。このテーマを選び、描き切ることができることがはらだ先生が「鬼才」といわれる所以じゃないでしょうか。
実は、この表紙の赤い人が怖いから、タイトルもタイトルで、恐ろしく感じていまして、最後まで手を出さなかった本です。そういう安易に手に取って読めない、気迫がこの本にはあります。だから気合を入れて、精神状態をニュートラルにして読みました。読後感は、映画1本みた後の虚脱感に近いものがありました。読むとつらいんだけど読みたい。刺激が欲しいんです!!
楽しいばかりがエンタテインメントではない、そんな刺激が欲しい方、ぜひお読みください。

「にいちゃん」ネタバレ感想

近親恋愛ものが地雷なので、タイトルから勝手にそういう想定をしていて、今時点(2020年8月)に出版されているはらだ先生のコミックの中で読むのは一番最後になりました。 が、そうじゃなく、子どもへの愛情の深いお話でして…。

「にいちゃん」あらすじ

主人公「ゆい」は近所の遊んでくれる「にいちゃん」が好きになる。
ゲームしたり、ごはん(といってもカップヌードル)食べたり面倒をみてもらっている。(ここの小学生「ゆい」のかわいさが半端ない) にいちゃんは、ガチで迫ってきて、子どもだったので驚いて、飛びだしたところ、母親がいてバレてしまい、会えなくなってしまう。
それが、再会する。
ゆいは、ずっとにいちゃんを探していた。

再会して関係をもつが、バラされないようにビデオに撮られたり、変なプレイをさせられている。
ゆいは、いやでも気づく。この人は、自分を好きではないと。これは何かの復讐だと気づく。
にいちゃんの部屋にあった封筒で、にいちゃんの名前が「景」(けい)だと初めて知る。うれしい。
クラスメイトの「舞子ちゃん」に告白されたゆいは、どうするか聞くと付き合ってみれば、といわれる。
もう逃げないというゆいをまだ疑いの目でみる、にいちゃん。
舞子と付き合うことにした。(にいちゃんへの献身?隠れ蓑的な?単なる好奇心?)
母親からメールがきて、変態扱いされることに荒れるにいちゃん。このあたりのにいちゃんの言動は引きこもりのひがみ屋感がでててうまい。
ゆいを呼び出し、痛めつける。最中に、舞子に勝手に電話して罵倒して別れるようにいう。ゆいは言われるままにして、にいちゃんはようやく収まったふう。

駅で舞子が待っていた。 口止めしないとと一瞬焦ったゆいだが、舞子は予想外にドライで助かる。
舞子は実は外見と違って、「かわいい普通の女の子」ではなく寛容。(なんて都合のいい女だ!最高の女子だ!)
ゆいは、にいちゃんのことを舞子に打ち明ける。

衝撃の5話目!

2人で、にいちゃんの家にいく。
舞子の父親が前科者でその被害者がにいちゃんであったという衝撃の事実が判明。
舞子はにいちゃんが誰かに愛されたいだけだと見抜く。ゆいはそれを聞いて…。
ゆいは、にいちゃんを抱いて、愛を証明しようとする。

うまくいったと思いきや、にいちゃんは会うことになっていた両親に罵倒され、残っていた自尊心もズタボロになる。
心配になって家の前に行くと引っ越しやのトラックが、にいちゃんは抵抗するのに疲れて行ってしまう。
ゆい「全部捨てて俺のところへきてよ」

実家にもどったにいちゃんは、女をあてがわれるが吐いてできない。
仕事を探さないと、と嘘をいって出かけ、探偵におじさんの居場所を探してもらう。
おじさんに庭先で会った景は、覚えてもいないことに愕然とし、なにも期待していたわけじゃないが、傷つく。
実家に帰って俺は病気じゃない、という。

大学生になった二人。
にいちゃんがやってきて二人に今までの事情を話す。もう逃げないよという「にいちゃん」に証明に人前でキスしてというゆい。いいシーンです。

描き下ろし

幸せなはずの二人だが、まだ罪悪感という名の暗い影が寄ってくる。

にいちゃん:
「イって冷静になると 不安になってきちゃって」
「別にもう 何かに怯える必要ないのにな」
「得体の知れない焦燥感というか・・・」
ゆい:
「檸檬を本屋に置いてくれば 治るんじゃない」-描き下ろしより

名ゼリフですね!
最後に親に言い出せないのを「おれたちは間違っていない」と自分に言い聞かせるように呪文のように唱えるゆい。
終わり。
一応補足しますと、このセリフは、小説の梶井基次郎「檸檬」を踏まえたものです。
-青空文庫 梶井基次郎「檸檬」

「にいちゃん」をどう捉えるか
読者によって、「にいちゃん」をどう思うか、対応は様々だと思います。でも小児○○者という社会で「人間のクズ」扱いされている人種をここまで深く描いたマンガは今までないんじゃないかと思います。私も嫌悪感しかなかったです。キモイし、自分がたとえ被害者だからって最低だと思います。同情の余地はないのですが、なぜどうしてそうなったのか、理論的な理由がわかれば、なる前の対策をするべきです。癖が犯罪によって植え付けられたのだとすれば。小児○○者の中にはDV被害者である場合があり、どうやって被害者が加害者になるかの過程が描かれています。
そういうことをまさかBL読んで考えさせられるとは、思いませんでした。
にいちゃんがにいちゃんになる前に手を打つ、誰かに十分な愛情をもらえれば、きっと犯罪件数も減らすことができる。

ゆいは、舞子ちゃんに会えてよかったでしょう。舞子ちゃん的な寛容さ、懐の大きさのある人が今必要なんです。にいちゃんも舞子ちゃん的な人に出会えていれば、何か変わったかもしれません。「舞子ちゃん」はこの漫画で女神です。というようなことを思いました。

読んでいると、犯罪者=小児○○者が実は被害者で、可哀そうな人に変わる。 そうなった途端、嫌悪しか感じていなかったにいちゃんに憐みを感じた。しかも大学に来たあとの、にいちゃんは前よりだいぶカッコいい。
最後にゆいが「俺たちは間違っていない」というセリフが印象的です。
ゆいは「にいちゃん」がずっと好きだったから、間違ってない。

愛と称してどこまで自分を差し出せるか、社会と断絶して生きていく生きづらさとそれを捨てても一緒にいる価値があるのか、無数の天秤が動きだして、それが人の行動を決めていく。
ゆいは、変なことされなかったとしたら「にいちゃん」がずっと好きだったか?
子どものころににいちゃんに出会わなかったら、大人になって「にいちゃん」に会っても好きになったか?
パラレルワールドでシュミレーションできるわけではないのでわからないが、ゆいも気づいている。気づいているのを認めるのが、怖い。
そして、出会いから終わりまで結構な年数です。にいちゃんは、成長したゆいとできるなら小児○○者じゃなくなったってことですよね?
にしても、少年のかわいらしさ、エロさを書かせたら右にでるものはいませんね。はらだ先生はやっぱり愛が深い。エロが深い。
「にいちゃん」も「ワンルームエンジェル」と並ぶ名作だなと思います。
どっと疲れましたけれど、やっぱりはらだ先生は凄いなーと改めて感じさせられた作品になりました。心から感謝です。ありがとうございました!
最後までお読みいただきありがとうございます。

参考サイト:https://journal.ridilover.jp/topics/38

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